奥羽教区について

 第7期奥羽教区長期宣教基本方針(2024年~2033年)

主題「主と共に沖へ漕ぎ出そう」

聖句「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」

(ルカによる福音書 5章4節)


基本方針

 奥羽教区は設立以来、教区形成の柱として「一つなる教会」を掲げ、「教区の教会性」を保つ工夫を重ねつつ歩んできた。東日本大震災の痛みを負い、東京電力福島第一原子力発電所メルトダウン・爆発事故による放射能汚染の中、2019年度の終わりからは、COVID19によるコロナ禍が全世界に拡がった。それにより、社会の分断と貧困、孤立・孤独の問題は一層深刻になっている。教区は困難な状況にあるからこそ、キリストの十字架の贖いと復活の希望を持って歩んで行こうとしている。沖へ漕ぎ出すよう弟子たちの背中を押された主が、わたしたちと共にいてくださることを信じて、神と人とに仕える教会の使命を果たしていきたい。


目標1 共に歩むための新しい繋がりを生み出す体制を整える

 ・教区内のすべての教会・伝道所がオンラインで繋がる

 ・ホームページの作成・充実・情報共有

 ・対面での集会を大切にする

 ・多選禁止〜多くの人がさまざまな課題に関わるしくみ

目標2 具体的な課題への取り組み

(奥羽教区が長年宣教の課題として受け止めてきたことを、継続的に担い続ける。)

 礼拝

・礼拝についての学び

  ・さまざまな人が共に礼拝する〜多世代、外国から来た人、障がいを持つ人

  ・礼拝奉仕の学び、奉仕者の減少と負担への対応

  ・次世代への音楽礼拝と賛美の学び

  ・礼拝の環境整備と楽器の維持管理のための仕組みを整える

 伝道

・地域と時代に即した伝道のあり方を目指す

・地域に開かれた教会

  ・教師の働きを支える(謝儀互助)

  ・教会強化推進会計の充実に努める

  ・信徒の交わりを深める(相互牧会)

  ・共同牧会について理解を深める。

 奉仕

・地域の課題への取り組み

  ・社会の課題への取り組み

  ・教区内の関係学校、施設、団体の抱える課題に取り組み、連携を深める

  ・キリスト教教育についての理解を深める

※「礼拝」「伝道」「奉仕」の領域は、それぞれ重なり合い、補い合うものと理解する。


作成にあたって

 奥羽教区は1946年に、東北教区から分離して設立された。東北6県が一つの教区となると「あまり地域が広いので、末端の教会になかなか行き渡らない」ということが理由の一つだった。しかし、それだけでなく、北東北3県には、都市型の大規模教会がほとんどなく、広い地域に点在する小さな教会同士が助け合い、互いに支え合って共に歩んでいきたいという強い願いがあった。そのため「奥羽教区は一つなる教会である」ということが設立以来大事にされてきた。奥羽教区内のすべての教会が、一つの教会の肢々であるという意識を持ち、「教区の教会性」を大事にしてきた。「教区の教会性」は、具体的には次のような取り組みに現れている。教区主催の集会(教区全体修養会、教師宣教セミナー)に、信徒・教師が共に集い、学びと交わりを深めること。教区常置委員会が教会の役員会の役割を果たし、各個教会を問安する仕組み。教師の謝儀保障が申請制度によらず、全教会・全教師が関わる給付制度であること。すべての教会が平等に教区総会に出席できるように、費用をみんなで分担する教区負担金制度。

 当初は、教区が教会を「指導・育成」する教区の指導性が重視されたが、現在は教区内の教会の「連帯・互助」の表れとして「教区の教会性」が捉えられるようになってきている。一貫して「一つなる教会」を大事にして歩んできた奥羽教区には、他では見られない教会同士の深い交わりや連帯が育まれ、維持されてきている。そして、1963年度から掲げられてきた10年一期の「教区長期宣教基本方針」は、教区内の各教会によく浸透し、教区全体の思いを一つにして目指す方向を明確にし、教会を励ます役割を果たしてきた。

 第6期の終わりの時期に、2020年度から感染症の拡大により、対面で集まり活動することが難しくなり、教区内の意思の疎通や課題の共有が困難という状況が長く続くことになってしまった。この間、地区を中心に各教会・伝道所の交わりを繋ぐ努力は継続し、オンラインの利用など新しい試みが積極的に行われるようになった。しかし、対面で教区総会が3年連続で開催できず、このままでは次の10年の方針を決定し、共有して出発することはできないと判断した。異例のことだが、第6期長期宣教基本方針は1年延長されることになった。

 そして、ほぼ半年をかけて教区の新しい組織が定まった時、多くの顔ぶれが変わり、社会の状況も大きく変化してきていることが見えてきた。教区も、これまでとは違う新しい体制を作る必要があると思われる。特に、二つの課題への対応が急がれる。

 一つは教区内にICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を導入すること。教区のさまざまな活動を支える会議、特に少人数の委員会の場合は原則オンラインで行い、距離を超えて意見の交換ができるようにする。一方で、大勢が集まる機会は、手厚く継続していけるようにする。このために、教区内の全教会・伝道所が一つも漏れることなく、教区のネットワークの中に加わり、参加できる体制を一刻も早く形成する必要がある。

 もう一つは、教区の課題の継承。多様な課題に対して、できるだけ多くの人たちがさまざまな課題に関わっていけるようにしたい。特定の人に任せるのでなく、課題について学びながら関われるような仕組みを作っていきたい。

 以上を踏まえて、教区財政の再検討と教区全体の理解、教会と施設・関係学校との関係、社会問題への対応、これからの礼拝など、多くの課題を合わせて考えていけるようにしたい。主が弟子たちに沖へ漕ぎ出すよう励まし、共にいてくださったように、わたしたちも困難な中にも希望を持って、主イエス・キリストの御委託に応えていく歩みを進めていく。



「教区の教会性」

―その目指してきたことは何であったのか。そして、これからの展望―

(1997年教師委員会作成)


はじめに

奥羽教区はその成立当初から「教区の教会性」を合言葉のようにして、「一つなる教会」としての教区形成を目指してきました。しかし1969年からの教会紛争によってもたらされた宣教理解や教会観の多様化、教区内の教会担任教師の世代交替や頻繁な転任などにより、「教区の教会性」の内容を不明確なものとしたまま、今日に至っているのではないかと思わされます。また教区形成の課題が当初の「指導・育成」型から「連帯・互助」型へと変化したことから、「教区の教会性」の理解に微妙な影響を与えてきたのではないかと思います。以上のことから改めて「教区の教会性」とは何であるのか、さらには今日における「教区の教会性」とは何なのであるかを問うことが求められていると思います。


「教区の教会性」とは

  日本基督教団成立時(1941年)、旧東北教区の一部であった青森・岩手・秋田三県が1946年に分離して奥羽教区が設立されました。そこには「小教会の強化と自給独立を目指すために、地方末端の教会と教区との意思の疎通を密にし、個々の教会の友交を深めなければならない」という教区理解があり、個々の教会・伝道所の痛みや喜びを共有し合える「一つなる教会」を目指そうとの願いがありました。この背景には、旧東北教区における教会間の交わりの希薄さに対する不満があったと思われます。

  「教区の教会性」という言葉には、旧日本基督教会における中会的イメージもあったように思われますが、「教区の教会性」は教会論的理念というよりも、教区の宣教の現実から生まれた必然的なものであったと考えられます。広大な地域の中に点在する教区内の諸教会が教会を維持し、伝道を推進するためには一つとなって、互いに協力し合い、支え合って行かなければならなかったのです。そこで、奥羽教区は「教区は教会である」との認識をもって、「一つなる教会」の主題の下に、教区と教会を共に伝道の主体と位置づけ、常置委員会による諸教会・伝道所に対する精力的な問安の実施、教会間の交流の促進、協力伝道の推進に努めてきたのです。また単に地域的な共同体としての連帯に留まらず、教団信仰告白に基づく一致を目指して教区形成をしてきました。

  これまでの歩みを振り返る時、奥羽教区は「教区の教会性」という主張と展開において、宣教の歴史の中で確かなる足跡を残し、一つの役割を果たしてきたと言えるのではないでしょうか。


「教区の教会性」の今日的意味

  日本基督教団という合同教会の一教区である奥羽教区が、今日改めて「教区の教会性」を標榜するとすれば、それは『日本基督教団信仰告白』に立って、『第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白』の指し示す方向に沿って、宣教の多様性を認めつつ、自立と連帯の上になされるべきだと思います。

  そして、教区内の各個教会・伝道所が、下記の諸点を留意しつつ、「一つなる教会」との認識のもとに、教区内の伝道を共同の責任として受け止め、より一層の協力伝道を推進することが「教区の教会性」の内実を深めることになると思います。

  第一に、高齢化や過疎化、教師数の減少が進む中で、今後いよいよ教会間の互助・連帯が必要になると思われます。そのためには教師謝儀互助制度や教会強化推進会計の一層の充実を図らなければなりません。そして、これらの制度や運用に於いて各個教会の自立性と連帯性及び宣教力が高められるようにさらに検討していかなければならないと考えます。

  第二に、今日の多様な宣教の課題についての取り組みは、個々の教会や個人の働きに任せることに終わらず、教区全体の課題として取り上げ、共に担っていくことが求められていると思います。そのためには各個教会・伝道所に集う信徒の豊かな賜物が活用されなければならないでしょう。

  第三に、教師において宣教理解や教会観の多様化が進む中で、教師は相互の信頼関係を築く努力をなしつつ、奥羽の宣教の課題を共有していく姿勢を持つことがもとめられていると思います。

  第四に、今後、「教区の教会性」の具体的、かつ有効的な展開を担うのは地区であると思われます。各地区協議会がそれぞれの地域における宣教協力を推進し、さらに各個教会の宣教の業をお互いに支え合っていくことが目指されるべきでありましょう。

  今日、奥羽教区は、この「教区の教会性」の主張と展開によってこそ、教団が真実の合同教会として立ち、その内実を深めるために奉仕することができるものと信じます。

  なお最後に、以上の事柄を教区全体の共通の課題とし、展開していくために、今後も長期宣教基本方針に基づいた教区形成がなされることが、必要であると考えます。